総入れ歯はどんな形をしているのか、歯がないところにどうやって固定しているのかなど、総入れ歯の特徴についてご説明します。
目次
総入れ歯はどうやってお口の中に固定されるのか?
部分入れ歯は残っている天然歯にバネをかけて入れ歯を固定しますが、歯が1本もない場合は固定するために使える歯がありません。そのため、歯茎を使って入れ歯を固定することになります。
下顎用の総入れ歯の固定方法
下顎用の総入れ歯は歯茎の上に乗せて使います。安定性を得るために、歯茎の土手に被さるように床と呼ばれる部分が作られます。床はプラスチック製で歯茎に似た色をしています。
上顎用の総入れ歯の固定方法
上顎用の総入れ歯は、引っ掛けるための歯がありませんので、安定させるのが困難です。そのため上顎の総入れ歯は床の部分を大きく作り、口蓋にぴったり合わさるように作ります。上顎用の総入れ歯の症の部分を床口蓋部(しょうこうがいぶ)と呼びます。
床口蓋部は広い面積をもっており、上顎にぴったりと吸着させて使います。
総入れ歯は噛む力が弱い
総入れ歯は噛む力が極端に弱くなり、健康な歯と比べると咬合力がわずか4分の1程度まで落ちてしまいます。そのため固いものはあまり噛むことが出来ません。
また、床口蓋部の面積を広く作らないと総入れ歯が安定しないため、お口に入れると異物感が大変大きいです。お口の中はとても敏感で、上顎の奥の方には軟口蓋(なんこうがい)と呼ばれる嘔吐反射をつかさどる迷走神経と舌咽(ぜついん)神経の咽頭枝が交差している部位があります。
そのため、上顎に総入れ歯を入れると床口蓋部の奥の方が常に軟口蓋に密着しますので、、喉の奥が刺激されて吐き気をもよおしがちになります。噛み合わせに対しても、痛みを感じる方もおられ、満足度は低いです。
総入れ歯は喋りにくい
総入れ歯を入れると、発音がしにくくなる方が多く、しっかり発音するためにはトレーニングが必要な場合もあります。
言葉が不明瞭になるため、家族や友人との会話がおっくうになり、人と会うのを避けるようになった患者さんもおられます。総入れ歯をお口に入れた時の違和感と共に発音の問題も、総入れ歯に慣れることで解決しなければならない問題の一つです。
総入れ歯の床の圧迫で歯槽骨が吸収される
総入れ歯を今後使っていく上でのもう一つの問題は、総入れ歯が歯ぐきを圧迫するために、その部分の歯槽骨が吸収されて溶けてしまうということです。そのため総入れ歯は一度作ったら終わりではなく、数年おきに患者さんの歯茎の形の変化に入れ歯がぴったり合うように調整するか、作り替える必要があります。
自費診療の金属床の総入れ歯
保険適用の総入れ歯はプラスチック(レジン)で作られているため、特に上顎の総入れ歯が分厚く口蓋を覆う形になっています。そのため違和感が大きく慣れるまでにはかなり時間がかかる方が多いという問題があります。
その違和感を解決するために、自費診療の総入れ歯になりますが、床の部分が金属製で薄く軽く作られている金属床の総入れ歯があります。お口に入れた時の違和感や喋りにくさが軽減され、金属ですので食べ物や飲み物の温度を感じることが出来ます。
床に使用される金属は当院ではコバルトクロム、チタンの2種類を取り扱っております。ただしコバルトクロム、チタンに金属アレルギーのある方はお使いいただくことが出来ず、保険適用でないため治療費が高額になります。
総入れ歯の形と歯茎への固定の仕方に関するQ&A
総入れ歯は上顎と下顎で異なる固定方法があります。上顎用は床口蓋部と呼ばれる部分が口蓋にぴったり合わせて使われ、吸着力によって固定されます。下顎用は歯茎の上に乗せて使われ、土手状の床が作られて安定性を得ます。
保険適用の総入れ歯の床はプラスチック製で分厚く、上顎の総入れ歯が口蓋を覆う形になっています。一方、自費診療の金属床の総入れ歯は金属製で薄く軽く作られており、違和感や喋りにくさが軽減されます。特に上顎では口蓋を覆う部分が小さいため、違和感が軽減されます。
自費診療の金属床の総入れ歯にはコバルトクロムとチタンの2種類の金属が使用されます。これらは軽くて薄く作られており、金属の特性によって食べ物や飲み物の温度を感じることができます。ただし金属アレルギーのある方は利用できないため、注意が必要です。
まとめ
総入れ歯には短所がいくつかあり、それは主に下記のようなものです。
- 口の中の違和感・不快感(痛む、吐き気がする、舌がひっかかる、傷が出来るなど)
- しゃべりにくく発音が不明瞭になる
- 固いものが噛めない
- 歯槽骨の吸収を促す
総入れ歯をより快適にお使いいただくために、インプラントで固定する「インプラント・オーバーデンチャー」やインプラントで一続きの上部構造を固定する「オールオン4」などの治療方法もありますので、担当医までご相談ください。