外食が多く1日に1回しか歯磨きが出来ないとしたら、虫歯になってしまうのでしょうか? 歯磨きは最低1日1回は必要か、ということについてご説明します。
最低1日1回は歯磨きをしなければいけない理由
お口の中は虫歯菌にとっては居心地のいい場所で、食事の度にエサである糖質が与えられ、とても増殖しやすい環境にあります。歯磨きをしない人は、殆どの場合、虫歯になってしまいますので、歯磨きの継続は必須です。
では、どのくらい歯磨きをサボると虫歯になるのでしょうか? 虫歯菌は歯垢の中で繁殖してバイオフィルムと呼ばれるヌルヌルの膜を作ります。虫歯菌はその膜によって歯や歯石にこびりついて守られており、酸を出し続けます。
虫歯菌は歯についてから歯垢の中で酸を作り、バイオフィルムの状態になるまでに必要な時間は、大体48時間くらいといわれます。
バイオフィルムの中で増殖した虫歯菌がエナメル質を溶かして歯に穴をあけるまでには、それから1~2週間かかります。
バイオフィルムが出来てしまうと、歯磨きで完全に落とすことは困難です。そのため、虫歯予防のためにはバイオフィルムが出来る前に歯垢を除去しなければなりません。バイオフィルムは2日で出来てしまうので、最低1日1回はしっかりと歯磨きをしましょうといわれるのは、このためです。
虫歯をつくる3つの条件
虫歯を予防するためには、虫歯がどうして出来るのかを知る必要があります。虫歯が出来る条件は3つあり、この3つの条件が重なった場合に虫歯が発生します。
つまり、3つの条件のうちの一つでも満たさなければ、理論上は虫歯にはならないということになります。
虫歯になる条件①虫歯菌がいる
虫歯は虫歯を引き起こす細菌による感染症です。虫歯を引き起こす菌の総称を便宜的に虫歯菌と呼びます。
虫歯菌は歯と歯の間や歯と歯茎の間の溝についた歯垢の中で棲息し、糖をエサにして酸を出します。歯の表面のエナメル質が酸によって溶かされて穴が開くと虫歯になります。
エナメル質は人間の体内で最も硬いのですが、エナメル質の下にある象牙質は軟らかいため、虫歯でエナメル質に穴があいてしまうと、その後の虫歯の進行はとても早いです。象牙質の下にある歯髄が虫歯菌に冒されると、虫歯がズキズキと激しく痛みます。
お口の中に虫歯菌さえいなければ虫歯にはならないのですが、虫歯菌は殆どの方の口の中に存在します。虫歯菌は赤ちゃんの頃に親からうつるといわれますが、親がどんなに気をつけていても、殆どの子供が虫歯菌をもっています。
虫歯になる条件②糖質がある
虫歯菌の好物は糖分です。糖分は甘いお菓子やご飯やパンなどの炭水化物に含まれていますので、それらの食べカスが虫歯菌の好物と考えてください。歯と歯の間や歯と歯茎の間の溝の部分にこれらの食べカスが残っていると、そこに歯垢がたまり、虫歯菌がどんどん増殖して酸を出します。
糖質が含まれているのはお菓子やご飯、パンだけではありません。糖質を含む野菜も多くありますので、甘いものを一切食べない方も、食事をする以上は糖質が口の中に残ることになります。
虫歯になる条件③虫歯菌が増殖するための環境がある
虫歯菌は人間の体温位の温度で湿っている場所で増殖します。つまり、お口の中は虫歯菌にとって繁殖するのに理想的な環境といえます。
歯と歯の間や、歯と歯茎の間、歯石の中、小さな虫歯の表面などが虫歯菌にとって快適な棲み家となります。
バイオフィルムは歯の再石灰化を邪魔する
バイオフィルムに歯が覆われると、唾液をはじいてしまい、唾液のもつ歯の修復作用である再石灰化作用を邪魔してしまいます。
虫歯菌が出した酸で歯の表面のエナメル質が溶けてしまうことを脱灰といいます。しかし唾液は修復作用をもっており、脱灰して歯から唾液中に溶け出したリン酸やカルシウムなどを、再び歯に戻してくれます。これを再石灰化といいます。
お口の中では常に脱灰と再石灰化が行われており、脱灰→再石灰化の繰り返しが維持できていれば、虫歯にはなりません。しかしお口の中に虫歯菌がたくさんいて、更にエサとなる糖質がたくさんある状態では、虫歯菌は酸を出し続けますので、唾液による再石灰化が間に合わず、虫歯になってしまいます。
それを防ぐためには毎日の歯磨きが欠かせません。
もし歯磨きが1日おきや2日おきになると、虫歯菌が増殖してバイオフィルムの膜をあちこちにつくります。
バイオフィルムはネバネバして歯からはがれにくく、虫歯菌を守る膜となっています。酸で歯が溶けた部分がバイオフィルムに覆われていると、そこには唾液が届かず、唾液が歯を守る再石灰化の機能が働きません。
歯磨きは最低でも1日1回必要なのかに関するQ&A
歯磨きは最低でも1日1回は必要です。口内は虫歯菌の繁殖に適した環境であり、糖質の摂取と虫歯菌の存在によって虫歯が発生します。虫歯菌はバイオフィルムを形成し、歯垢にこびりついて酸を出し続けます。バイオフィルムが形成されるのは約48時間で、虫歯の進行には1?2週間かかるため、1日1回の歯磨きで虫歯予防ができます。バイオフィルムが歯を覆うと再石灰化が阻害され、虫歯が進行します。
歯磨きを1日おきや2日おきにすると、虫歯菌が増殖してバイオフィルムが形成される可能性が高くなります。バイオフィルムはネバネバして歯からはがれにくく、虫歯菌を守る膜となります。歯の再石灰化が妨げられ、虫歯の進行が早まります。バイオフィルムが形成される前に歯垢を除去するため、最低1日1回の歯磨きが推奨されます。
虫歯菌は人間の体温位の温度で湿っている場所で増殖します。お口の中の歯と歯の間や歯茎の間、歯石の中などが虫歯菌にとって快適な棲み家となります。特に食べカスが残りやすい部分は虫歯菌の増殖が進みやすく、虫歯の発生リスクが高まります。虫歯予防のためには、これらの部分の歯垢をしっかりと除去することが重要です。
まとめ
歯磨きを2日サボると、バイオフィルムが出来てしまいます。バイオフィルムは歯ブラシで取れにくく、唾液のもつ再石灰化作用を邪魔するため、虫歯になりやすくなってしまいます。そのため、虫歯菌から歯を守るためには、まずバイオフィルムをつくらせないようにすることが重要で、バイオフィルムが出来る前に、最低でも1日に1回はていねいに歯磨きすることが必要になります。