
ある日、鏡の前でふと気づく。
昨日までは何ともなかったのに、口の中に違和感が広がる。そして舌先でそっと触れると、やっぱり——詰め物が取れてしまっている。
「え…? また? なんでこんなに何度も…?」
そんな絶望感が押し寄せる。歯医者に行くたびに、「今度こそ大丈夫」と思っていたのに、気づけば同じトラブルの繰り返し。
食事のたびに気をつけているはずなのに、硬いものを避けているのに、また取れてしまうなんて…。
この不安、モヤモヤ、そして「また治療に行かなきゃ…」という面倒くささ。
そんなあなたの気持ち、よくわかります。詰め物が何度も取れてしまうのには、ちゃんとした理由があるのです。そして、その原因を知ることで、もう「また取れた…」と嘆く日々から抜け出すことができるかもしれません。
では、一体なぜ詰め物は繰り返し取れてしまうのか? その理由を一緒に探っていきましょう。
詰め物が何度も取れてしまう理由
歯から詰め物が取れてしまう場合は、どのような理由があるのでしょうか?詰め物が取れてしまう原因は、いくつかの要素が関係しています。考えられる主な原因を見てみましょう。
① 噛み合わせの問題
歯の詰め物は、かみ合わせが合わないと過剰な力がかかり、取れやすくなります。特に、詰め物の高さがわずかに合っていない場合、特定の部分に過度な負担がかかり、外れやすくなるのです。
私たちの歯の位置は、親知らずが生えてきたり、抜歯で歯を失ったりすると少しずつ移動することがあります。噛み合わせが変わることで、歯に今までよりも力がかかるようになって、詰め物が外れてしまう場合があります。
② 接着剤の劣化
詰め物を固定する接着剤は、長年の使用で劣化します。特に、日々の食事や飲み物による温度変化や、強い咀嚼圧で少しずつ剥がれていくことがあります。
詰め物と歯を接着するための歯科用セメント(接着剤)が経年劣化を起こすと、詰め物が歯から外れてしまうことがあります。金属の詰め物が劣化・破損して外れる場合もあります。
③ 虫歯の再発
詰め物の下に虫歯ができると、接着面が不安定になり、詰め物が取れやすくなります。これは「二次う蝕(にじうしょく)」と呼ばれ、詰め物が取れる原因の一つです。
詰め物と歯の隙間から虫歯菌が中に入り込んで、詰め物の下で虫歯が出来ることがあります。特に銀歯は隙間が出来やすいので二次虫歯の心配があります。
自費診療のセラミックの詰め物の場合は、歯との間に隙間が出来にくいため、二次虫歯は起こりにくいというメリットがあります。
詰め物の下が虫歯になっている場合は、一度詰め物を全て取り除き、虫歯に侵されている歯周組織を削って取り除いた後に、もう一度詰め直します。
④ 歯ぎしり・食いしばり
無意識のうちに歯ぎしりをしていたり、日中に強く食いしばるクセがあると、詰め物が取れやすくなります。特に就寝中の歯ぎしりは、自分では気づかないうちに詰め物に大きな負担をかけています。
詰め物が何度も頻繁に取れる場合に考えられるのは、歯ぎしりや食いしばりがあるせいで、詰め物に強い力や、歯を揺らすような力がかかっているということです。
歯ぎしり・食いしばりの癖は、一部の歯に強い力を継続的にかけますので、詰め物が外れやすく、詰め物が割れたり欠けたりもしやすいです。
⑤ 詰め物の適合性の問題
詰め物がぴったりと適合していないと、隙間ができ、外れやすくなります。これは、治療時の型取りや噛み合わせ調整の精度にも関係しています。
放置するとどうなる?
詰め物が取れたからといって、しばらくそのままにしておいても大丈夫……そう思っていませんか?
実は、放置することでさまざまな問題が起こる可能性があります。
① 虫歯が悪化するリスク
詰め物が取れた部分は、細菌が入り込みやすい状態になっています。放置すると、そこから新たな虫歯ができ、最悪の場合、神経にまで進行してしまうことも。
② 噛み合わせのズレ
取れた詰め物を放置すると、周囲の歯が傾いたり、噛み合わせがズレたりすることがあります。噛み合わせのバランスが崩れると、他の歯にも悪影響を及ぼします。
③ 歯の破損リスク
詰め物がなくなることで、歯に直接負担がかかるようになります。その結果、歯が欠けたり、割れたりするリスクが高まります。
取れたらどうする? 予防策は?
詰め物が取れたらすぐにすべきこと
取れた詰め物は保管して歯医者に持参(再利用できる可能性がある)
取れた部分を避けて食事をする(硬いものを避ける)
取れた詰め物は保存しましょう

口の中で詰め物や被せ物がとれたことに気づいたら、噛まないように気をつけて吐き出してください。その後、捨てずにケースか何かに入れて保管し、歯科医院までお持ちください。
劣化がひどくない場合は、元通りに合着させることができたり、大きな被せ物は仮歯で再利用できることもあります。
詰め物が取れた部分は清潔にしましょう
本来保護してくれる詰め物・被せ物がなくなった土台の歯は、とても脆弱になっています。細菌や汚れに対して無防備で、放置しておくとあっさり虫歯に感染してしまいます。
食後はできるだけすぐに歯磨きをすることを心がけて、清潔に保ちましょう。
詰め物が取れたらそのまま放置しない
もし、詰め物・被せ物がとれてしまっても、痛みもなく、食事もさほど問題ないとしても、「大丈夫だろう」と楽観視せずに、すぐに歯科医院に行くことを考えましょう。
遅くても1ヶ月以内には必ず診てもらわないと、もしそれ以上経つと、二次虫歯になっていなかった場合でも虫歯ができる可能性が高いです。
詰め物・被せ物が取れないためのセルフケアについて
詰め物・被せ物を長持ちさせるためには、毎日のセルフケアによって虫歯や歯周病にならないことが重要です。そのために正しいブラッシングの方法を身につけましょう。
取れにくくするための予防策
- 定期的なメンテナンスを受ける(詰め物の状態をチェックしてもらう)
- ナイトガードを使用する(歯ぎしり・食いしばりの対策)
- 噛み合わせの調整を受ける(過度な負担がかかっていないかチェック)
- より耐久性の高い素材を選ぶ(セラミックやゴールドなど)
1. 歯ブラシの選び方
毛が柔らかい歯ブラシを選びましょう。銀歯、レジンの詰め物や被せ物は自然の歯よりも傷つきやすいため、硬いブラシではなく柔らかいブラシを用いて表面に細かい傷を作らないようにしましょう。
2. ブラッシングの方法
歯ブラシで力を入れて歯を強くこするのはNGです。力を抜いて小刻みにブラシを動かしましょう。歯と歯肉の境目から歯の表面に向けて45度の角度で歯ブラシをあててブラッシングすると、プラークや食べ物の残りカスを効果的に除去できます。歯垢をきれいに除去することで詰め物や被せ物の周りの歯肉を健康に保つことが出来、詰め物や被せ物が外れにくくなります。
3. 歯間ブラシやデンタルフロスの使用
歯間ブラシやデンタルフロスを用いて、歯ブラシだけでは落としきれない歯と歯の間の汚れを除去しましょう。特に、被せ物の下や詰め物の周りは汚れがたまりやすいため、丁寧にケアすることが重要です。
4. ブラッシングの頻度
1日に少なくとも2回、食後すぐに歯磨きをしましょう。歯垢をきれいに落とすことで虫歯菌が繁殖するのを防ぎます。就寝前には特に丁寧に歯磨きを行いましょう。
5. フッ素入り歯磨き粉の使用
フッ素は歯質を強化して虫歯を予防しますので、詰め物や被せ物の下に再び虫歯が発生するのを防ぎます。
これらのセルフケアの習慣により、詰め物・被せ物が外れるリスクを減らすことができます。定期的に歯科健診を受けて虫歯や歯周病を早期発見・治療することも大切です。
まとめ

詰め物が何度も繰り返し外れる場合の原因は様々ですが、補綴物の形が歯に合っていないということもあります。いずれにしましても、何度も外れると歯に悪影響がありますので、早めに歯医者を受診するようおすすめします。