虫歯が痛いのに、歯医者が怖くて行けなかったり、行く時間がなかったり、いざ行くとなると、どの歯医者に行けばいいのか迷っていたり、様々な理由で虫歯の治療が遅れる場合があります。虫歯を治療しないでいるとどのようなことが起こるのかについてご説明します。
歯を失う主な原因は「虫歯」
歯を失う原因の殆どが「虫歯」か「歯周病」です。この二つの病気は年齢によってなりやすさに差がありますが、40代までの方が歯を失う原因で最も多いのは「虫歯」です。
虫歯の原因菌として良く知られているミュータンス菌は、食べ物・飲み物に含まれる糖分を栄養として増殖して酸を出し、歯の表面のエナメル質を少しずつ溶かしていき、虫歯にします。歯にあいた穴がどんどん大きくなり、歯髄に到達すると痛みが起こります。虫歯がもっと進行すると神経が死んでしまい、歯の根っこまで細菌が侵入して炎症を起こすと、歯を抜かなければいけなくなってしまいます。
虫歯はどんなふうに進行するの?
虫歯はどんな過程を経て進行していくのでしょうか? 虫歯は進行度によってC0~C4に分けられています。
自然治癒するC0の虫歯とは?
虫歯は進行の度合いによってC0~C4に分けられています。
C0は歯の表面のエナメル質が僅かに虫歯菌の出す酸で溶かされた状態で、歯の表面が白濁するなど、僅かな変化が見られるだけです。
エナメル質には神経がないため、C0の虫歯はまだ痛みはありません。C0の虫歯が見つかった場合は、直ぐに削って治療せず、経過観察となります。その理由は、唾液のもつ再石灰化作用で、歯にミネラルが吸収され、歯の表面の修復がなされる場合があるからです。
この段階では痛みがありませんので、歯科医院で指摘されない限り、虫歯が出来ていることに気づけません。
C1~C4の虫歯は放っておいても治らない
C1になると、歯の表面に僅かな虫歯の穴が見られるようになります。そのまま虫歯菌が歯を溶かし続けると、やがて虫歯の穴は大きくなっていき、エナメル質の内側の象牙質に達します。象牙質の虫歯は、冷たい食べ物などで痛むことがあります。
虫歯がもっと奥へと進んでいき、神経のある歯髄に触れると、ズキズキした強い痛みが襲ってきます。この段階では、耐えきれないほどの痛みが起こることも多いので、患者さんはすぐに治療しなければと感じることでしょう。
神経に達した虫歯の治療は、神経を取る×ずいと呼ばれる処置が必要になり、その後被せ物を作って歯に被せますので、通院回数も増えます。
C4では抜歯になってしまうことも・・
虫歯が酷くなり、歯の根にまで達している場合は、歯を大きく削った結果、被せ物をつけても直ぐに外れてしまうことがあります。そうなると抜歯しなければいけません。
そうならない為にも、虫歯の治療はなるべく早めに受けていただきたいと思います。
虫歯とはどんな病気?
虫歯は子どもの頃にかかって治療経験のある方が多いですが、虫歯の原因や、効果的な予防方法をご存じでしょうか?
虫歯は細菌による感染症
虫歯は、3歳くらいまでに周囲の大人から虫歯菌と呼ばれる細菌に感染することが原因で始まります。虫歯菌は糖をエサにして酸を出し、酸によって歯が溶かされて穴があくのが虫歯です。
最初は歯の表面のエナメル質が酸で溶かされますが、この段階では痛みはありません。エナメル質の内側の象牙質まで虫歯が到達すると、象牙質はやわらかいため、一気に虫歯が進行します。象牙質の虫歯は冷たい飲み物を飲むと痛みが起こることがあります。
象牙質の更に内部の歯髄に虫歯が達すると、虫歯はズキズキと痛み始め、治療のためには神経を取ったり大きな被せ物をつける必要があります。
虫歯が歯根に達すると、抜歯になる確率が高いため、そうなる前に早めに治療を受けるようにしましょう。
虫歯予防は歯磨きと定期健診
虫歯予防のためには、歯から出来る限り歯垢を除去することが大切です。歯垢がたまりやすいのは、歯と歯の間、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)、奥歯の噛む面などです。
歯垢がたまりやすい場所は、歯ブラシの毛先が届きにくい場所でもあります。歯と歯の間や歯と歯茎の間は、デンタルフロスや歯間ブラシを使うと、歯垢がよく取れます。
しかし、歯周ポケットの奥や、既に歯石になったものはセルフケアではきれいに出来ないため、歯科医院での定期健診を年に3~4回うけて、虫歯や歯周病のチェックと共に、歯のクリーニングを受けると、お口の中から歯垢や歯石を効果的に除去することが出来ます。
虫歯予防のために意識するポイントは以下のようなものです。
- 就寝前・起床後の丁寧な歯みがき
- 食事はしっかり噛んで唾液を出す
- 食後にキシリトールガムを噛む
虫歯を治療せずに放置に関するQ&A
虫歯を放置すると、虫歯が進行し、歯の内部の組織にダメージを与える可能性があります。最終的には痛みや感染が悪化し、歯を失う可能性もあります。
虫歯は、最初はエナメル質の表面を少しずつ溶かす段階から始まり、次第に象牙質や歯髄に影響を及ぼす過程です。進行すると痛みや感染が悪化し、歯を抜く必要が生じることもあります。
虫歯の予防には、定期的な歯磨きと定期健診が重要です。歯垢の除去には歯間ブラシやデンタルフロスを使用し、歯科医院でのクリーニングも効果的です。食事後にキシリトールガムを噛むことや、適切な食事摂取も予防に役立ちます。
まとめ
虫歯を放っておくと、どんどん進行して虫歯の穴が大きくなり、ズキズキと激しい痛みが起こります。痛みが出てくると、神経を取る治療が必要になり、手遅れの場合は抜歯になることもありますので、出来る限り早めに虫歯治療を受けましょう。歯医者の定期健診を受けていただくと、虫歯の早期発見が可能になります。
虫歯を治療しないで放っておくと、さまざまな負の影響が生じる可能性があります。このことに関連する研究を2件紹介します。
1. Mota-Velosoらの研究では、未治療の虫歯とその臨床的影響が、8〜10歳のブラジルの学童の生活の質に与える影響について調査されています。虫歯による様々な問題(歯髄の露出、歯片による潰瘍、瘻孔、膿瘍など)は、子供の口腔関連生活の質(OHRQoL)に悪影響を及ぼすことが分かりました。これは、未治療の虫歯が子供の日常生活に悪影響を及ぼす可能性があることを示しています。【Mota-Veloso et al., 2015】
2. Monseらの研究では、未治療の虫歯の臨床的影響を評価するための新しい指標(PUFA指標)が提案されています。この指標は、虫歯が歯髄に到達した場合、歯片による潰瘍、瘻孔、膿瘍の存在を記録します。この研究では、6歳と12歳の子供たちの間で、PUFA指標が0以上の子供の割合がそれぞれ85%と56%であることが明らかになりました。これは、未治療の虫歯が進行して感染症を引き起こす可能性が高いことを示しています。【Monse et al., 2010】
これらの研究から、虫歯を治療しないことは、子供の生活の質に悪影響を及ぼし、歯髄の露出、潰瘍、瘻孔、膿瘍などの重篤な口腔内感染症を引き起こすリスクがあることがわかります。