入れ歯を装着すると出っ歯に見えるから嫌だという方がおられます。今日は入れ歯の種類や、入れ歯をつけると以前よりも出っ歯に見える場合の原因についてご紹介します。
入れ歯を入れると出っ歯に見える場合の原因
入れ歯を入れたら出っ歯に見えるようになった場合、部分入れ歯の方よりも、上顎、もしくは下顎の歯をすべてなくされた総入れ歯の方が多いと思われます。
歯のない状態で慣れている方が総入れ歯を装着すると、お口の周囲に張りが出て、歯が出ているように見える場合があります。
出っ歯に見えるのが嫌で前歯が引っ込んだ状態の入れ歯を作ると、今度は上下の前歯がぶつかってしまい、入れ歯が壊れる理由となります。お口元の張りを考え、少し前に出た状態で入れ歯の位置を調整することもあります。
入れ歯はどんな時に必要?
虫歯・歯周病・外傷により、歯を失ったり、抜歯の処置を受けなければならない方はおられます。歯の機能の回復や審美性を高めるためにも、義歯治療は必要です。義歯治療には、入れ歯の他にインプラント・ブリッジなどの治療法があります。入れ歯(義歯)には部分入れ歯や総入れ歯があり、入れ歯も保険適用内から保険適用外の入れ歯まで種類や料金は様々です。
入れ歯が合わない理由
入れ歯のせいで出っ歯に見えて後悔した・顔つきが変わったという情報を聞くと入れ歯の治療を不安に思われるでしょうが、入れ歯が出っ歯に見える原因は、患者様のお口に合っていないことです。お口に合わない入れ歯を長い期間使用し続けると、下記のような状態になります。
●食事の際に装着して噛むと痛みや嘔吐反射があると、できるだけ痛みの少ない噛み方をしてしまう。片側噛みなどの癖に繋がり、お口元の筋肉に偏りが出てしまいます。
●高さやサイズが合っていない入れ歯を使用すると、噛む刺激が顎の骨や脳に伝わりません。お口周りの筋肉が落ちて痩せると、シワが目立ち、鼻の下のくぼみが顕著になります。そのため、顔の下半分が老けた印象になることがあります。
●入れ歯の歯や歯肉の色が顔から浮いたり、隣接歯に付ける金具(バネ)が見えてしまうと、人工的な印象を受けます。見た目で入れ歯と周囲の人にばれるのが嫌となります。
入れ歯の種類を教えて
では、どんな入れ歯の種類があるのか、詳しくご説明いたします。
保険適用の義歯
レジン床義歯
- 歯科用のプラスチックで歯茎の部分を作製する義歯で費用は安く、再調整も可能
- 厚みがあるため、喋りにくさや嘔吐反射があり、食べ物を噛んだ時の食感は感じにくく、留め金部分に食べかすや歯垢(プラーク)が付着しやすい
保険適用外の自費治療の義歯
金属床義歯
- 外側ではなく内側をチタンやコバルトクロムで作製するため強度が高いのに違和感が少なく、食べ物の温度が伝わる
- 自費治療なので料金が高いことと、年月経過したら調整がしづらくなる
ノンクラスプデンチャー
- ナイロン樹脂で作製するため留め金がない治療法
- 金属アレルギーの方にも使用でき、柔らかく見栄えが良い
- 樹脂で作製するため金属床義歯と比べて噛む力が落ちるのと、再調整に時間がかかる
マグネットデンチャー(総入れ歯)
- 歯の根(歯根)に磁性体の金属を入れ、入れ歯の内部に磁石を入れる方法
- 総入れ歯を磁石の力により、がたつきがなく、安定させることが可能
- 歯根が残っていない場合はできず、義歯を外せばMRI撮影は可能だが、画像が乱れる
インプラントオーバーデンチャー
- 歯根がない方にはインプラントを歯茎に埋め込み、入れ歯を支持する方法
- 義歯を外れにくく噛む力を強くすることができ、留め具をかける歯への負担が減る
- インプラントを埋入するための手術が必要であることと、インプラント部分のクリーニングを定期的に行わなければならない
シリコーン義歯(当院では扱っておりません)
- 歯肉に接する部分をシリコンの材料に変更しているため、装着の際に痛みが出にくく噛める
- 強く噛むと義歯が沈み、金具をかけている歯に負担がかかり、歯の寿命を短くしてしまう可能性がある
入れ歯にはそれぞれ特徴があり、特に自由診療の入れ歯は歯科医院によって、取り扱っている義歯の種類は様々です。自費治療は材料が多いため、歯科技工士がより緻密に入れ歯を作製することができます。
入れ歯を装着すると出っ歯に見える場合があるに関するQ&A
出っ歯に見える原因は、患者の口に合わない入れ歯を使用することです。合わない入れ歯は噛み方に影響し、筋肉の偏りや顔の老化印象をもたらす可能性があります。
お口に合っていない入れ歯は食事時の痛みや嘔吐反射、噛む力の偏りを引き起こし、口元の筋肉や顔のバランスに影響を及ぼす可能性があります。また、噛み合わせの問題は顎関節症や不調の原因ともなり得ます。
入れ歯の種類は多岐にわたります。保険適用のものとしてはレジン床義歯があり、自費治療の義歯として金属床義歯、ノンクラスプデンチャー、マグネットデンチャー、インプラントオーバーデンチャー、シリコーン義歯が存在します。
まとめ
歯が抜けたまま放置すると、反対の歯が伸びてきたり、隣の歯が倒れて歯並びが乱れ、歯みがきがしにくくなり、他の残存歯の虫歯や歯周病を引き起こす原因になります。咀嚼機能を改善するためにも、歯がグラグラする、もしくは抜けた場合は、歯医者さんで相談し、処置を受けましょう。しっかりとお口の中を診断したうえで、当院ではどのような治療が患者様におすすめか、歯科医師が治療計画をご案内します。ぜひ一度お気軽にご相談ください。
入れ歯を装着することで出っ歯(上顎前突)に見える場合があるかどうかに関する研究を2件紹介します。
1. Jindra, Eber, Pešák (2002) の研究では、歯の喪失とその後の入れ歯(部分的または完全な)による歯列の再構築が、患者の発話と声に変化をもたらす可能性があることを指摘しています。この研究では、入れ歯を装着した患者の発話と声のパラメーターを分析しています。入れ歯の構造、特に過咬合、過伸展、プレートの高さ、口蓋の厚み、切歯の位置、硬口蓋のルガ・パラチナの形成が、発声において重要な要因であるとされています。間違った入れ歯の構造では、音響的変化が続く可能性があり、患者のストレスに影響する可能性があります。【P. Jindra, M. Eber, & J. Pešák, 2002】
2. Baume (1950) の研究では、上顎前突の問題に対する関心が高まっており、上顎前突が歯周病や顕著な歯の摩耗の進行に寄与する可能性があるとされています。この研究は、上顎前突の発生原因に関する矛盾した考え方を明らかにしていますが、入れ歯の装着が上顎前突の外観にどのように影響するかについては直接的な言及はありません。【L. Baume, 1950】
これらの研究結果から、入れ歯を装着することで上顎前突に見える可能性があることが示唆されています。特に、入れ歯の構造が患者の発声に影響を与え、それが上顎前突のような外観を引き起こす可能性があると考えられます。しかし、上顎前突の外観が直接的に入れ歯によって引き起こされるかどうかについての明確な証拠は、これらの研究からは得られていません。