詰め物・被せ物

抜歯したら差し歯はできないの?

抜歯したら差し歯できないの?

高槻クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 髙野 祐

今日は、抜歯後に差し歯ができない理由や、抜歯後の選択肢についてご紹介します。

抜歯したら差し歯はできません。その理由は?

差し歯は、歯根に土台を差して歯を立てるという構造です。歯根がなければ差し歯ができません。抜歯という処置は歯根まで抜く処置です。そのため、歯根が無くなると差す部分がないため、差し歯には出来ず、別の治療法になります。

差し歯とは

差し歯という言葉はとても一般的ですが、厳密に言うと現在の治療法では歯を差すわけではありません。ご説明するために、歯の名称や過程をご説明します。口腔内に露出していて噛み合わせる歯の部分を歯冠、歯茎に埋まっている歯の根の部分を歯根と呼びます。虫歯の進行により歯冠がボロボロだが歯根はまだ健在という状態の方に、歯根に土台を立てて行う被せ物の補綴(ほてつ)治療を一般的に差し歯と呼ぶことが多いです。

自分の歯根を使用する被せ物治療
  1. 神経(歯髄)まで達して歯冠がボロボロになった
  2. 神経やむし歯菌に汚染されている部分をすべて除去する根管治療を行う
  3. 神経が入っていた部分を綺麗に掃除し薬剤を入れる
  4. しっかり残っている歯根に土台(コア)を立てる
  5. 被せ物(クラウン)の型どりを行う
  6. 土台の上に人工歯のクラウンを被せる

昔は土台と人工歯が一体化していたため、差し歯と言われるようになったという説があります。現在は歯根に土台を差して、更に歯を被せる治療法に代わっています。

差し歯の土台の材料について

歯根に立てる土台(コア)は保険適用の方はメタルコア、自費治療の方はグラスファイバーとコンポジットレジンから作られたファイバーコアを採用しています。メタルコアは強度により歯が割れる可能性がありますが、ファイバーコアは強度と弾性を持ち合わせているため、歯には優しい素材です。

被せ物の材質について

被せ物(クラウン)は歯科医院によって取り扱いが異なります。当院では銀歯やCAD/CAM冠(歯の位置によってできない場合有り)、オールセラミック、ジルコニアセラミック、セレッククラウンを採用しています。

銀歯は保険適用のため費用が安く、強度もあります。CAD/CAMも入れた当初は審美性が高いのですが、いずれも経年劣化します。自費治療の材料は費用は高いですが経年劣化を起こしにくい材料です。(ハイブリッドセラミックは取り扱っておりません)

  • オールセラミックは陶器と同じ材質で変色がしづらく前歯に向く
  • ジルコニアセラミックはオールセラミックより強度を持ち合わせており奥歯に向く
  • セレッククラウンは上記のセラミックと異なりコンピューターによって歯の形に作製されるため、審美性に劣るが費用は安い

抜歯に至るケースとは?

  1. 歯周病が進行している
  2. 歯根が短い
  3. 歯根が破折している

1. 歯周病が原因

歯周病が重度になると、顎の骨である歯槽骨(しそうこつ)にまで影響を及ぼします。骨が痩せると歯を支えきれないため、抜歯を行わないとなりません。

2. 歯根の短さが原因

歯根が短いというのは、むし歯が進行してしまったという原因がとても多いです。そのため、歯根の長さに合わせた土台にすると歯がきちんと立たない可能性があります。

3. 歯根破折が原因

歯根破折は、芯を入れても支える部分が割れているため芯が不安定になります。芯がグラグラすると歯を支えられません。

抜歯になった時の治療法

抜歯後でも歯を入れる方法はあります。歯を抜けたまま放置すると、横の歯が倒れたり、対合歯が伸びたり、お口の環境に対して悪いことしか起きません。歯科医院で受けられる義歯治療は3種類あります。

  • 入れ歯
  • ブリッジ
  • インプラント

保険適用内で行える義歯治療は入れ歯やブリッジで料金は安いですが、残存歯の健康を考えた際には、おすすめとは言えません。インプラントは人工歯根を埋め込む手術を行う自費治療のため料金は高いですが、残存歯に影響を及ぼさず自立し、安定性が高い治療です。

抜歯したら差し歯はできないのかに関するQ&A

抜歯した場合、なぜ差し歯ができないのですか?

抜歯した後に差し歯を作ることができない主要な理由は、差し歯が必要とする歯根が存在しないためです。差し歯(または被せ物)の治療では、残っている歯根に土台(コア)を立て、その上に人工の歯冠(クラウン)を被せます。しかし、抜歯によって歯根が完全に取り除かれてしまうため、差し歯を支える構造がなくなり、従って差し歯を作ることが不可能になります。

差し歯の土台の材料にはどのような種類がありますか?

差し歯の土台、すなわちコアを作る際には、主にメタルコアとファイバーコアの二種類の材料が使用されます。保険適用の場合、多くは金属製のメタルコアが用いられますが、この材料は強度は高いものの、歯が割れるリスクがあります。一方、自費治療の選択肢としては、グラスファイバーとコンポジットレジンから作られたファイバーコアがあります。この材料は強度と弾性を兼ね備えており、歯に優しい特性を持っています。

被せ物(クラウン)の材質とその特性について教えてください。

被せ物(クラウン)には様々な材質があり、それぞれ異なる特性を持っています。例えば、銀歯は保険適用で費用が安く、強度もありますが、経年劣化する傾向があります。CAD/CAM冠は審美性が高いですが、こちらも経年劣化の可能性があります。自費治療の材料としては、オールセラミック(陶器と同じ材質で変色しにくい)、ジルコニアセラミック(強度が高く奥歯に適している)、セレッククラウン(コンピューターによって作製されるため、審美性に劣るが費用が安い)などがあります。

まとめ


抜歯後に差し歯ができない理由としては、歯根がないためです。ご自身の歯をできるだけ長持ちさせれば、安定して噛むことができます。定期的に通院し、歯や歯肉の状態をしっかりと確認してもらうということは予防という意味でもとても大切です。

抜歯後に差し歯(デンタルインプラント)を設置することは十分可能です。最近の研究では、抜歯直後にインプラントを設置することの有効性が示されています。

1. 抜歯直後のインプラント設置
抜歯直後にデンタルインプラントを設置することは、歯科インプラント治療において一般的な臨床手順となっています。この治療法は、治療時間の短縮、手術回数の減少、理想的な軸位置でのフィクスチャーの設置、および患者に対する肯定的な心理的影響など、いくつかの利点を提供します。 【Al Nashar, 2020

2. 即時荷重インプラントの利点
即時荷重インプラントとは、歯の抜歯後すぐにインプラントを負荷することを意味します。この手法の利点には、手術介入の回数が少なくなること、全体的な治療時間の短縮、軟組織および硬組織の損失の軽減、そして患者の心理的満足感があります。この研究は、抜歯後すぐに仮設の修復体で即時インプラントを行う方法の利点を示しています。 【Dolidze & Kublashvili, 2022

これらの研究から、抜歯後にデンタルインプラントを設置することは、多くの場合で成功する可能性が高く、治療時間の短縮や患者の満足度向上にも寄与することがわかります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 高槻クローバー歯科
院長 髙野 祐

2013年 岡山大学 歯学部卒業。2014年 岡山大学病院臨床研修終了

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高槻クローバー歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック