虫歯になって目の下が痛いという方はおられます。歯科ではない原因で痛むケースがありますが、放置した虫歯が原因になるケースもありますので、詳しくご紹介いたします。
虫歯で目の下や他の部分が痛い理由
目の下が痛い、もしくは重いけど他の診療科で異常のない方は、虫歯を放置しすぎて対処していない可能性があります。上顎の歯が虫歯になると、目や顔面の神経に近いため影響を受けやすく、エナメル質が溶けて虫歯を放っておくと内側にある象牙質や神経(歯髄)まで深く進行します。
細菌が上顎洞へ広がる歯性上顎洞炎になっている
虫歯菌が歯の根(歯根)に嚢胞という巣を作ってしまう状態になると、歯根から鼻の横にある空洞の上顎洞(じょうがくどう)に細菌は広がります。歯性上顎洞炎を発症すると溜まった膿により片側の鼻から色のついた鼻水が出たり、頭が重く感じたり、目の周りに痛みを感じることがあります。
歯のサイズが変わり歯並びの悪さで痛みを感じる
虫歯になった歯はエナメル質が溶けて小さくなります。歯のサイズが変われば今まで隣接していた他の歯ときちんと並ばず、歯が動いて歯並びが変わったまま食事を行います。噛み合わせが悪い状態で咀嚼を続けると、特定の歯への負担や、筋肉、顎関節に左右差が生じます。その状態が長く続けばめまいや耳鳴りなどの症状が起きるリスクもあります。
重度の虫歯になると歯は抜け、膿が出て口臭が強くなります。その状態でもなお放置していると他の歯も細菌の進行により抜けてしまったり、全身に細菌が回ると心筋梗塞などにつながるリスクがあるため、注意が必要です。
痛い場合は早めに対処
- 歯に違和感がある
- 目の下の片側が痛い
このような症状がある場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。症状や痛みをお伺いし、精密検査をして適切な処置を歯科医師が行います。虫歯ではなく、歯周病が原因であるというケースもあります。
片側のしびれや言葉に影響がある
- 片側の手足だけが痛い・しびれる
- 片方の目がかすむ
- 急に言葉が話せなくなる
体の痛みやしびれに左右の差がはっきりとしていて、言葉が急に話せない場合は、歯が原因と考えづらいです。脳神経を専門とする医院を受診してください。
虫歯はどうすれば早く見つかる?
虫歯や痛みなどにならない歯周組織とは、すなわち健康な歯周組織です。健康な歯や歯肉を維持するために大切なことは、歯科医院へ定期的に通院してメンテナンスの受診です。定期検診では患者さんのお口の状態を確認してから溜まった歯垢や歯石をクリーニングで除去し、歯質の強度のためにフッ素塗布を行います。
定期的なメンテナンスは予防に通じる
患者さん自身が丁寧な歯磨きを行えば歯垢は取り除くことができますが、奥歯は難しいなど位置の問題もあります。歯垢が唾液の成分と結合して歯周ポケットに沈着する歯石になれば、資格を持った歯科衛生士しか取り除けません。歯石は虫歯や歯周病の原因になりますので、定期的にクリーニングをする必要があります。虫歯になりかけの段階である初期むし歯で指導を受ければ、歯を削り詰め物や被せ物をしなくても、タフトブラシやフロスを使った歯磨きと唾液による自浄作用で再石灰化することが可能です。
虫歯で目の下が痛くなるかに関するQ&A
虫歯が進行すると、目の下や顔面に痛みを感じることがあります。これは上顎の歯が虫歯になり、その影響が顔面の神経や筋肉に及ぶためです。特に、歯性上顎洞炎などの状態になると、上顎洞(鼻の横にある空洞)に細菌が広がり、膿が溜まることにより顔面の痛みや圧迫感が生じます。また、歯のサイズが変わり、歯並びに影響が出ることも、噛み合わせの悪さによる痛みの原因になります。
歯性上顎洞炎は、虫歯などの口腔内の感染が上顎洞に広がった状態を指します。これは、歯の根が鼻の横にある上顎洞に近いために起こります。感染が広がると上顎洞内に膿が溜まり、頭痛、鼻水、顔面の痛みや重み、目の周りの圧迫感などを引き起こす可能性があります。
重度の虫歯は、局所的な問題にとどまらず、全身への健康リスクも伴います。虫歯が進行し、歯が抜けたり膿が出たりする状態では、口臭の問題だけでなく、細菌が血流に入り込むことで心筋梗塞などの重大な健康問題を引き起こすリスクもあります。また、歯並びの変化によって噛み合わせが悪くなり、めまいや耳鳴りなどの症状が生じることもあります。
まとめ
歯の違和感があり、目の下が痛い、もしくは重いという症状が出ていると、原因が虫歯であるケースもあります。痛みや違和感の続く方はなるべく早めにクリニックを受診をしましょう。症状やお悩みを相談して精密検査を受けることをおすすめします。
虫歯と目の下の痛みの関連については、直接的な関連を示す研究は少ないですが、間接的な関連については考えられます。
1. 顎の神経と眼の痛みの関係
顎の歯(特に上顎)の問題は、顔や目周辺の痛みに影響を与えることがあります。たとえば、一部の顔面痛や神経痛は、顎の歯の問題に由来することがあります。特に、三叉神経の分布域において、歯の問題から起こる痛みが顔や目の周りに放散する可能性があります。 【Nikolishin, Rybalov, & Korolenko, 2021】
2. 全身的な感染のリスク
虫歯が重度である場合、感染が広がり、全身的な症状を引き起こす可能性があります。例えば、歯の根の垂直方向の骨折が原因で眼窩頂症候群が発生し、視力の急速な喪失につながるケースが報告されています。 【Li, Huang, Qiu, & Lin, 2020】
これらの研究から、虫歯が重度になると、目の下の痛みを含むさまざまな全身症状を引き起こす可能性があることがわかります。ただし、これらの症状は虫歯が原因であると断定するのは困難であり、他の要因も考慮する必要があります。