インプラント

インプラント手術後に気をつけることとは?

インプラント手術後に気をつけることとは?

インプラント治療は失った歯の機能を回復させるための手段で、歯の見た目と機能の両方を回復させることが出来ます。手術後は、担当医の指示を守って速やかな傷の治癒につとめましょう。インプラント手術後の注意点や適切な対処法をご説明します。

インプラント治療とは

インプラントの構造インプラントとは、身体に人工の材料や部品を入れる治療の総称で、歯科においては、歯を失った方の歯の機能を、人工歯根によって回復させるための治療です。

インプラントは以下の3つのパーツから出来ています。

  1. インプラント体(人工歯根)
  2. アバットメント(支台)
  3. 上部構造(被せ物)

インプラント体は歯を失った部分の顎の骨に直接埋め込まれます。材質はチタンやチタン合金、セラミックなどの身体に馴染みやすい材料で出来ており、直径3~5mm、長さ6~18mmのごく小さなネジ状をしています。

アバットメントはチタン、チタン合金、ジルコニアなどの材質で出来ています。上部構造は虫歯の治療に使うクラウンと同じもので、レジン(プラスチック)、セラミック、セラミックとレジンを混ぜたハイブリッドセラミック、金合金などの材質があります。

インプラント手術後の痛みの管理について

インプラント

手術自体は局所麻酔下で行われるため、治療中の痛みはほとんどありませんが、麻酔が切れた後に痛みや不快感を感じることがあります。

手術後の痛みに関する詳細と、それを管理するための方法についてご説明します。

インプラント手術後の痛みの原因

手術における痛みは、主に以下の要因によって引き起こされます。

1. 手術による組織の損傷

インプラントを顎の骨に埋め込む過程で、歯茎を切開し、骨に穴を開ける必要があります。これにより、手術部位の組織が損傷を受け、痛みの原因となります。

2. 炎症反応

身体が傷ついた場合、組織を修復しようとする力が自動的に働くため、手術部位に炎症反応が起こります。炎症反応が起こる過程で、腫れ、赤み、痛みを引き起こすことがあります。

痛みの期間と程度

痛みのピーク

手術後の痛みは一般的に最初の24〜48時間で最も強く感じられます。その後、徐々に軽減していきます。

痛みの持続期間

軽度から中程度の痛みが手術後数日間から1週間程度続くことがあります。しかし、人によって感じ方には大きな差があり、あまり感じない方がおられる反面、痛みが長引く場合もあります。

痛みの管理方法

インプラント手術後の痛みを軽減するためには、以下のような方法が有効です:

冷却療法

手術直後の最初の24〜48時間は、手術部位の頬の上から冷却パックを当てることで、腫れや痛みを抑えることができます。

痛み止めの使用

痛みが起こっている場合は我慢せず、医師が処方する痛み止めを指示通りに服用してください。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが一般的に推奨されます。

安静にする

手術後は、強い運動や活動を避け、十分な休息を取ることが重要です。身体を休めることで、回復が促進されます。

適切なオーラルケア

手術部位を避けるように毛の柔らかい歯ブラシを使用して、周辺の歯を優しくブラッシングします。手術部位は出血が止まっても暫くは直接触らないようにします。

注意点

  • 痛みが予想よりも強かったり、長引いたりする場合は、感染や他の合併症の可能性があるため、すぐに医師に相談してください。
  • 自己判断で痛み止めの量を増やしたり、処方されていない薬を使用することは避けてください。

手術後の痛みは個人差が大きく、管理方法もそれぞれの状態に合わせて調整する必要があります。また、埋入本数が多い時は身体への負担も大きいため、安静に過ごすようにしましょう。

歯科医院から手術後の生活指導について書面でのご案内があると思いますが、必ず指示に従い、不安や疑問がある場合は医師に相談することが最も重要です。

インプラント手術後の食事について

食べ物

インプラント手術後の食事は、回復過程において非常に重要な要素です。手術後の初期段階では特に注意が必要で、適切な食事を摂ることで手術後の不快感を最小限に抑えながら栄養を摂取することが速やかな回復に繋がります。

手術直後の食事

手術後の最初の24時間は、特に慎重に食事を選ぶ必要があります。この時期は、食べ物を噛むことで手術部位に不必要な圧力をかけないことと、楽に消化できる食品で栄養をしっかり摂取することが大切です。

流動食または半流動食

手術直後はスムージーやスープ、ヨーグルトなどの柔らかく、液体に近い食品が適しています。これらは栄養が豊富で消化しやすく、手術部位に負担をかけません。

冷たい食品

アイスクリームや冷たいスムージーは、手術部位の炎症を和らげる効果があります。ただし、極端に冷たい食品は避け、適度な温度のものを選びましょう。

避けるべき食品

熱すぎる食品や飲み物は手術部位を刺激し、炎症を悪化させる可能性があるため避けてください。また、硬い食品や粘着性のある食品も避けるべきです。

回復期間中の食事

手術後数日から1週間程度経過すると、徐々に通常の食事に戻すことができます。しかし、まだ回復期間中であるため、引き続き慎重に食品を選ぶ必要があります。

柔らかい食品

パスタ、リゾット、柔らかく煮た野菜、果物(バナナやリンゴソースなど)は回復期の食事に適しています。これらは栄養が豊富で、噛む際に手術部位を傷つけないため、回復を妨げることがありません。

バランスの取れた栄養

タンパク質、ビタミン、ミネラルを豊富に含む食品を意識的に取り入れ、回復をサポートしましょう。たんぱく質は組織の修復プロセスに欠かせないため、豆腐や魚などの柔らかい食品を選びます。

水分補給

十分に水分を摂ることは、健康維持と回復に役立ちます。水やハーブティーなど、無糖で刺激のない飲料を選んでください。

注意点

噛む力と位置

食事をする際には、インプラントを施した側を避け、反対側の歯で食べ物を噛むようにしましょう。これにより、食事中にインプラント部位をうっかり傷つけてしまうことがなくなります。

アルコールと喫煙

アルコールと喫煙

手術直後には飲酒と喫煙は避けましょう。これらはどちらも回復プロセスに悪影響を及ぼす可能性があります。

飲酒を避ける理由

血流への影響

アルコールは血管を拡張させる作用があるため、飲酒によって出血しやすくなる可能性があります。手術後は手術部位の出血が暫く続く場合があり、アルコールの摂取は止血を妨げる可能性があります。

薬物との相互作用

手術後に処方される痛み止めや抗生物質などの薬物とアルコールが相互作用し、副作用を引き起こす可能性があります。飲酒によって薬の効果が減少したり、予期せぬ反応が起こることがあります。

回復プロセスへの影響

アルコールは免疫力を低下させ、傷の治りを遅らせることがあります。手術後の回復期間中は、身体の自然な治癒能力を最大限に活用することが重要であり、飲酒はそれを阻害する可能性があります。

喫煙を避ける理由

血行不良

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血流を悪化させます。血行が悪化すると、手術部位の組織への酸素や栄養素の供給が減少し、組織の回復が遅れることがあります。

インプラントと骨の結合の阻害

治療を成功させる為には、インプラント体が骨としっかり結合しなければなりません。タバコを吸うことは、インプラント体と骨との結合を阻害し、失敗リスクを高めることが知られています。

感染リスクの増加

タバコに含まれる有害物質は口腔内の環境を悪化させ、細菌の増殖を促すことがあります。これにより、手術部位や口腔内での感染リスクが高まり、回復を遅らせる原因となります。

このように、アルコールやタバコは一般的に回復プロセスを遅らせるため、特に手術後の初期段階では避けるべきです。

インプラント手術後に気をつけることに関するQ&A

インプラント手術後に痛みが生じる原因は何ですか?

手術後の痛みは主に2つの原因によります。1つ目は手術による組織の損傷で、顎の骨に穴を開けてインプラント体を埋め込む過程で発生します。2つ目は、手術部位の炎症反応で、身体が組織を修復しようとする自然な過程で生じる腫れや赤みが原因です。これらは手術の正常な一部と考えられ、適切な管理で徐々に改善します。

インプラント手術後の痛みを管理する方法は?

手術後の痛みの管理には、冷却療法、痛み止めの使用、十分な休息の確保が有効です。手術直後の24〜48時間は冷却パックを利用して腫れや痛みを和らげ、医師の指示に従って痛み止めを適切に使用します。また、過度な身体活動を避け、十分な休息を取ることで身体の回復を促します。

インプラント手術後の食事で注意すべきことは?

手術直後は流動食や半流動食、冷たい食品を選び、手術部位に負担をかけないようにします。熱すぎる食品や飲み物、硬い食品は避けるべきです。回復が進むにつれて、柔らかい食品やバランスの良い栄養を摂取し、十分な水分補給を心がけましょう。また、インプラントの手術を受けた側を避けて噛むことも重要です。

まとめ

インプラント手術は手術後のケアによって回復の速さが違います。痛みに対する適切な対処、栄養価の高い柔らかい食事の摂取、そしてオーラルケアを慎重に行うことが、回復期間をスムーズにすることに繋がります。

また、手術後は、アルコールやタバコを避け、定期的な歯科診察を怠らないことも重要です。これらのガイドラインに従うことがインプラント治療の成功に繋がります。

インプラント手術後の注意事項について、以下の論文を基にお答えします。

1. 「ビタミンCを用いたインプラント手術後の創傷治癒に関する研究」では、ビタミンCの補給が骨移植を伴う手術や慢性歯周病患者の手術後の創傷治癒を改善することが示されています。ビタミンCは、手術後の創傷治癒プロセスにおいて重要な役割を果たすことが確認されており、ビタミンCを補給することで手術後の組織の回復を促進することができます。しかし、手術後の痛みを軽減する効果は確認されていません。【Xiao Li et al., 2018

2. 「即時インプラントとその上部構造の成功率に関するシステマティックレビュー」では、抜歯直後のソケットに即時にインプラントを配置し、最低1年間追跡調査した結果、インプラントとインプラント支持義歯の生存率、生物学的、技術的、審美的合併症の発生率、および軟組織と硬組織の変化の程度が評価されています。このレビューは、即時インプラントの高い生存率を示していますが、長期的な治療成功を決定するためには、さらに長期間の研究が必要であることを示唆しています。【N. Lang et al., 2012

これらの論文から、インプラント手術後には以下の点に注意することが重要です。
・ビタミンCの補給
手術後の創傷治癒を促進するために、ビタミンCの補給を検討してください。ビタミンCは組織の回復を支援し、治癒プロセスを加速させる可能性があります。
・経過観察とフォローアップ
インプラントとその上部構造の長期的な成功を確保するために、定期的なフォローアップと経過観察が重要です。特に初期段階での適切な管理と観察により、合併症のリスクを最小限に抑えることができます。
手術後のケアは、手術の成功と長期的な結果に大きく影響します。正しいアフターケアと定期的なフォローアップによって、インプラントの長期的な成功が確保されます。

この記事の監修者
医療法人真摯会 高槻クローバー歯科
院長 髙野 祐

2013年 岡山大学 歯学部卒業。2014年 岡山大学病院臨床研修終了

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高槻クローバー歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック