インプラント

インプラントには年齢制限はあるの

インプラントには年齢制限はあるの

インプラント治療は、虫歯などで失った歯を置き換える治療方法として広く普及しています。日本人が歯を失いはじめるのは、50代以降からといわれますが、50代以降、何歳までインプラント治療は可能なのでしょうか。インプラントの年齢制限についてご説明します。

インプラントとは?

インプラント模型

インプラントは、歯を失った時の治療方法の一つで、顎骨に小さなネジ状のチタン製のインプラント体(人工歯根)を直接埋め込み、失われた歯の根の代わりにします。

インプラント体は埋入から数か月の間に骨と強固に結合します。インプラント体の上に上部構造(被せ物)を取り付けると、天然の歯そっくりに見え、しっかりと機能するようになります。

インプラントは、歯の見た目と機能性の両方を回復させるために、世界中で多くの方が治療を受けています。。

インプラントの構造

インプラントに年齢制限はあるのか?

実際には、「インプラントに絶対の年齢制限はない」ということがほとんどの歯科専門家によって支持されています。重要なのは患者さんの全体的な健康状態と、特に顎骨の健康です。しかし、特定の年齢層では、治療前に追加の評価や準備が必要になることがあります。

1. 年齢の下限

子供

成長中の子供に対してはインプラント治療は行えません。

  • 一般的に18歳以上が推奨されます。
  • 顎の成長が完了していることが重要です。

18歳以上が推奨される理由は、この年齢までに顎骨の成長がほぼ完了するためです。成長途中の顎骨にインプラントを埋入すると、顎の成長に伴ってインプラントの位置がずれてくる可能性があります。例外的に、先天的に歯が欠損している場合などは、より早期のインプラント治療が検討されることもあります。

2. 年齢の上限

シニア

80代や90代の患者さんでもインプラント治療を受けられる事例があります。

  • 明確な上限はありません。
  • 高齢者でも適応可能ですが、全身の健康状態が重要です。

高齢者の場合、骨粗しょう症や他の慢性疾患の有無、回復力などが考慮されます。局所麻酔下で行える手術なので、全身麻酔のようなリスクは避けられます。

3. 治療にあたって考慮すべき点

高齢者がインプラント治療を受けられるかどうかは、いくつか考慮すべき点があります。

  • 骨密度・・インプラントの成功には十分な骨量が必要です。不足している場合は骨移植が検討されます。
  • 全身疾患の有無・・糖尿病や心臓病などは治療の可否や術後の経過に影響を与える可能性があります。
  • 喫煙習慣の有無・・喫煙は血流を悪化させ、治癒を遅らせる可能性があるため、禁煙が推奨されます。
  • 口腔衛生の状態・・歯周病などの口腔内の問題は、インプラントの寿命に大きく影響します。

4. 個別評価

検査結果によって患者さん個別に評価がされます。

  • 歯科医師による詳細な診断と評価が不可欠です。
  • 年齢よりも個人の健康状態が重要です。

CT撮影などによる詳細な顎骨の評価が行われます。血液検査で全身の健康状態を確認することもあります。患者さんの生活習慣や期待値なども考慮されます。

5. 代替治療

歯を失った場合の治療方法はインプラント以外にブリッジ、入れ歯があります。年齢や健康状態によってはブリッジや入れ歯など他の選択肢も検討されます。

  • ブリッジ・・隣接する健康な歯を利用して欠損部を補う方法です。
  • 部分入れ歯・総入れ歯・・取り外し可能な義歯です。

これらの選択肢は、費用、治療期間、身体的な負担などの観点から検討されます。

インプラント治療と年齢制限を多角的に考える

1. 医学的側面

インプラント治療における年齢制限は、単純な数字だけでなく、患者さんの健康状態に大きく依存します。若年層では顎骨の成長が完了していることが重要で、高齢者では骨質や全身疾患の状態が焦点となります。

近年の医療技術の進歩により、かつては適応外とされていた患者さんにもインプラント治療の可能性が広がっています。例えば、増骨の技術の発展により、骨量が不足している患者さんでもインプラント治療が可能になるケースが増えています。

2. 社会的・心理的側面

年齢制限を考える上で、患者さんの生活の質(QOL)と社会参加の観点も重要です。特に高齢者においては、近年は定年退職後も働く方が多く、生涯現役という考え方も定着しつつあります。そのため、高齢者における歯科治療に対する意識も年々高まっています。

一方で、若年層におけるインプラント治療は、審美性や将来的な歯の健康に対する期待と関連しています。

3. 倫理的考察

医療倫理の観点から、年齢だけを理由にインプラント治療を制限することは適切ではありません。むしろ、個々の患者さんの状況を総合的に評価し、最適な治療法を選択することが求められます。

同時に、特にご高齢の患者さんの場合、インフォームドコンセントの過程で、治療の必要性、リスク、代替案についての十分な説明と理解が必要です。

4. 経済的側面

インプラント治療は一般的に保険が適用されず、比較的高額な治療法です。特に若年層や高齢者にとっては経済的負担が大きくなる可能性があります。

5. 長期的展望

インプラントの寿命は通常10~15年以上とされていますが、患者さんの予想余命との関係で治療の適否を判断することもあります。ただし、この判断は慎重に行われるべきで、単に年齢だけでなく、患者さんの全体的な健康状態や生活の質を考慮する必要があります。

6. 技術革新の影響

歯科医療技術の進歩は、年齢制限の概念を常に更新し続けています。例えば、デジタル技術の導入により、治療計画の精度が向上し、より幅広い年齢層の患者さんに安全な治療を提供できる可能性が広がっています。

まとめ

インプラント治療には明確な年齢制限はありませんが、患者さんの個別の状況を総合的に評価することが対越です。若年層では顎骨の成長が完了しているかどうかが、高齢者では全身の健康状態が、インプラントが可能かどうかのポイントとなります。

技術の進歩により、従来は適応外とされていた患者さんにも治療の可能性が広がっています。しかし、インプラント治療が最適な選択肢とは限らず、ブリッジや入れ歯など他の選択肢も含めて検討することが大切です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 高槻クローバー歯科
院長 髙野 祐

2013年 岡山大学 歯学部卒業。2014年 岡山大学病院臨床研修終了

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高槻クローバー歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック