「寝る前には歯を磨きなさい」と親から言われて育った方も大勢おられると思います。寝る前の歯磨きは虫歯や歯周病の予防のためにとても大切です。
それはどうしてなのか? 就寝前の歯磨きが必須である理由と、歯磨きを無視して寝てしまった結果お口の中で何が起こるのかについてご説明します。
夜の間に口の中で何が起こっているのか
夜、歯を磨かずに寝ると、お口の中に残った食べ物や飲み物から歯の表面や歯と歯の間などに歯垢がついたままになります。お口の中はもともと湿っていて温度が37度前後あり、細菌がとても繁殖しやすい環境なので、歯垢の中では細菌が繁殖して、お口全体に拡がります。
細菌は生きているので、顕微鏡で見るとうごめいている様子を見ることが出来ます。そして歯垢を除去しない限り、その中でどんどん増殖し続けます。更に、寝ている間は唾液の分泌が低下するので、唾液の持つ抗菌作用や洗浄作用が行き届かず、細菌が更に繁殖しやすい環境になります。
細菌の中には代表的な虫歯の原因菌であるミュータンス菌や、歯周病を引き起こす原因となる菌がいます。そのため、寝る前に歯を磨かないとお口の中にこれらの細菌が残って増え続け、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
夜寝る前に歯を磨いたりデンタルフロスを歯と歯の間に通すことで、歯垢を取り去り、お口の中の細菌の数を減らすことが出来ます。
口の中の細菌はどんな問題を引き起こすの?
歯の表面や歯ぐきに細菌が残っていると、夜の間に細菌が繁殖して口内に問題を引き起こします。
虫歯菌は酸を出し、歯を溶かすことから、歯の直接の原因と考えられます。また、細菌は歯周病の原因になるものもあり、歯周病に繋がる第一歩である歯肉炎を呼ばれる歯ぐきの炎症を引き起こします。
歯肉炎にかかると歯ぐきが炎症を起こして赤みを帯び、健康な歯ぐきよりも柔らかくなります。そのまま気付かずに放置すると、歯肉炎は歯周炎に進行して、歯と歯ぐきの間に歯周ポケットと呼ばれる溝を作り、その中で増殖していきます。
歯周ポケットの中で増殖する菌は、どんどん歯周ポケットを深くしていき、やがて歯を支えている歯槽骨などの歯の周囲の組織に影響を及ぼし始めます。
歯周炎は治療せずに放っておくと、歯の根の周囲に膿がたまって悪臭を発します。そして歯がグラグラし始めて、最悪の場合は歯が自然に抜けてしまうという経過をたどります。
寝る前の歯磨きはどんな風にしたらいいの?
毎日寝る前には、歯ブラシで必ず歯を磨いて汚れを落とすように習慣づけてください。ブラッシングの際にはフッ化物入りの歯磨き粉を使用すると、虫歯のリスクを軽減する効果があります。
デンタルフロスを使って、歯ブラシが届かない歯の間の歯垢を取り除きましょう。歯と歯ぐきの間の歯垢を除去するには、タフトブラシや歯間ブラシの使用がおすすめです。これらの様々なデンタルケアグッズを使うことで、夜の間にお口の中で繁殖する細菌を減らすことが出来ます。
歯磨き後は、寝る前に水以外のものを食べたり飲んだりしないようにしましょう。また、寝る前以外にも出来るだけ食後はしっかりと歯を磨くようにすれば、お口の中の細菌をもっと減らすことが出来ます。
寝る前の歯磨きに関するQ&A
寝る前の歯磨きは、虫歯や歯周病の予防のために口腔内の細菌の数を減らすことが目的です。
就寝中は唾液の分泌が抑制されるため、お口のが乾燥して細菌が繁殖しやすくなります。更に、歯垢が残っていると細菌が増え、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
毎日寝る前に歯ブラシを使用して歯を磨き、デンタルフロスを使って歯の間の歯垢を取り除くことがおすすめです。
まとめ
寝る前に歯を磨かないと、夜の間にお口の中で細菌がどんどん増え、その中でも虫歯や歯周病の原因になっている菌が歯や歯ぐきに深刻な症状を引き起こすことをご説明しました。
虫歯や歯肉炎、歯周炎は歯科での定期健診で発見することが出来ますので、年に数回の歯の定期健診をぜひお受けいただきたいと思います。