銀歯の被せ物をしたときに、銀歯の周囲にデンタルフロスを通すと、フロスが臭くなることがあります。どうして銀歯の周囲は臭くなるのか、ご説明します。
目次
銀歯の周りはなぜ臭くなりやすいのか?
虫歯を削って奥歯に被せ物をかぶせる場合、銀歯は保険がきくため、被せ物の材質に銀歯を選ぶ方が一定数おられます。
1.銀歯は表面に汚れがたまりやすく細菌が繁殖して臭いの原因になる
銀歯は金属なので割れたり欠けたりすることがなく、強い素材なのですが、表面に傷がつきやすく、目に見えない程の細かい傷がつき、そこに汚れがついて細菌が繁殖し、口臭の原因になることがあります。
細かい傷にたまった汚れは歯ブラシできれいにすることが難しく、歯医者での定期健診時にクリーニングを受けないと、汚れをきれいに落とすことが難しいです。
自費診療のセラミックの被せ物の場合は、傷がつきにくく、汚れもつきにくい素材なので、銀歯のように表面についた汚れから臭いが発生することはありません。
2. 銀歯と歯茎の段差には歯垢がたまりやすくため臭いの原因になる
銀歯は精巧に作られていても、銀歯と歯茎の間に段差ができやすいです。段差の部分には汚れがつきやすく、歯垢がたまりやすいため、細菌が繁殖して臭いの原因になる場合があります。
銀歯からの臭いを予防するには定期健診を必ず受けること
銀歯特有の事情により、臭いが発生しやすいとしたら、どのようにすれば銀歯の周辺の臭いを防ぐことが出来るのでしょうか?
ご自宅での歯磨きを徹底して行っても、銀歯の表面の細かい傷に入り込んだ汚れを落とすことは難しく、隣の歯との間の汚れや、銀歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の中の汚れも、ブラシの毛先が届きません。
そのため、数か月に一度、歯医者の定期健診に必ず通って、プロによるクリーニングを受けましょう。
当院では、エアフローという器械を使って、微粒子のパウダーを歯に吹き付け、同時にぬるま湯でパウダーと汚れを洗い流します。天然歯の表面の汚れも除去しますので、食事にによる着色汚れが落ちて歯本来の色に戻ります。
歯科医院でのクリーニングを受けることで、臭いの元はかなりきれいにすることが出来ます。
歯周病が進行すると臭いが発生する
歯周病は細菌による感染症で、歯茎などの歯周組織に炎症が起こります。そのため、被せ物をした差し歯であっても周囲の歯茎は歯周病になることがあり、差し歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の中に細菌が入り込んで毒素を出し、ドブのような臭いを出すこともあります。
歯周病で口臭が発生する場合、歯周病がかなり進行していることが考えられますので、直ちに歯医者で治療を受ける必要があります。放っておくと、炎症による組織の破壊が歯茎から骨へ進み、骨が歯を支えられなくなると、歯がグラグラになって、最後には抜けてしまいます。
そのため、一刻も早く歯周病の進行を止めるための治療を受けることが絶対に必要になります。
歯茎から膿が出ると独特の臭いがする
歯ぐきから細菌が入り込み、歯の根の付近で炎症が起こって、歯茎から膿が出ることがあります。膿には独特の臭いがありますので、歯茎から膿が出ていると、かなりの口臭になります。
膿が出ているとわかったら、すぐに歯科を受診し、歯茎の炎症を抑える処置を受けましょう。
銀歯のまわりが臭くなるに関するQ&A
銀歯の周りが臭くなる原因は、細かい傷がつき、そこに汚れや細菌が溜まるためです。特に歯垢が付着しやすく、その細菌の繁殖が口臭の原因となります。
はい、銀歯の細かい傷や歯周ポケット内の汚れを歯ブラシできれいにすることは難しく、虫歯や歯周病を予防するためには定期的な歯医者のクリーニングをお勧めします。
銀歯からの臭いを予防するためには、定期的な歯医者の健診とクリーニングが必要です。エアフローなどの専門的な方法で汚れを取り除くことが効果的です。
まとめ
銀歯の被せ物をされている方で、口臭に悩んでおられる場合は、銀歯が原因かもしれません。しかし他にも口臭の原因は様々ありますので、銀歯だけが原因ということはないかもしれません。口臭でお悩みの方は、担当の歯科医師や歯科衛生士とよく相談して、口臭対策を行いましょう。
銀歯の周りが臭くなる原因について、2つの研究を紹介します。
1. Lorscheider, Vimy, Summers (1995) による研究では、銀歯に使用される銀アマルガムが口内で水銀の蒸気を放出することが明らかにされています。この水銀の蒸気は吸入され、体内の組織に吸収され、イオン化された水銀に変化し、最終的には細胞のタンパク質に結合します。この水銀の放出が臭いの原因となる可能性があります。【Lorscheider et al., 1995】
2. Hultmanらの研究では、銀アマルガムの使用が免疫系に影響を与え、自己免疫病を引き起こす可能性が示されています。銀アマルガムの中の水銀や銀などの重金属が、免疫系に慢性的な刺激を与え、結果として口内環境の変化を引き起こし、これが臭いの原因となる可能性があります。【Hultman et al., 1994】
これらの研究から、銀歯の周りの臭いは、銀アマルガムから放出される水銀蒸気や、免疫系への影響によって引き起こされる可能性があることがわかります。