矯正歯科

矯正治療後の後戻りが起こる理由とは?

矯正治療後の後戻りは必ず起こるの?

矯正治療後に歯並びがきれいになっても、リテーナーと呼ばれる保定装置の装着を怠ると、歯並びが元に戻ってしまう後戻りが発生します。後戻りはなぜ起こるのか、その原因、後戻りを起こさない為のリテーナーの重要性についてご説明します。

矯正治療後の歯の後戻りとは

女性

矯正治療後の歯の後戻りとは、矯正治療で歯を動かした結果一度はきれいな歯並びになったものの、治療終了後に元の位置やそれに近い方向へと動いてしまう現象を指します。

歯の位置を整えて理想的な歯並びになったとしても、その歯並びを維持するためには一定のケアが必要になります。

矯正治療後の後戻りが起こる原因

矯正治療後の歯の後戻りには様々な原因があります。一般的には、治療後の歯のケアやリテーナーの使用、日常の生活習慣(癖)に気をつけることで、後戻りを防ぎきれいな歯並びをキープすることに繋がります。

1. 歯周組織の再編成による生物学的な要因

歯を支える組織は一度壊れては再編成することを繰り返して歯を動かしていきます。そのため、治療が終わっても一定の期間は歯が元の位置に戻ろうとする力が働きます。

2.噛み合わせの悪さや噛む力のアンバランス

舌や頬の筋肉は矯正治療をする前の歯の位置による筋肉の動きに慣れています。そのため、新しい歯並びになっても筋肉や歯周組織が適応するまでは、元の位置に戻ろうとする力が働く場合があります。

  • 正しくない噛み合わせや噛む力の不均衡が後戻りを引き起こす可能性があります。

3.舌癖や口呼吸の癖がある

歯に力を加える生活習慣があります。例えば、舌で歯を押す、爪を噛む、ペンを噛むなどというものです。これらの習慣によって歯に力がかかり、歯を動かして歯列の後戻りを起こすことがあります。

  • 舌癖や口呼吸など、歯並びを悪化させる習慣が後戻りの原因となります。
  • 舌を前に突き出すクセなどがあると、歯を押して動かしてしまいます。

4. 噛み合わせが合っていない場合

治療が終わっても噛み合わせが合っていない状態の場合、歯の後戻りを引き起こす場合があります。

5. リテーナーをきちんと装着しなかった

治療後には歯の後戻りを防ぐために保定装置(リテーナー)と呼ばれる装置の使用が必要です。リテーナーをつけ忘れた、失くした等の理由で保定が十分に行えなかった場合、歯は後戻りを起こす場合があります。

6. 親知らずの影響

  • 親知らずが他の歯を押している場合、歯並びに悪影響を及ぼす場合があります。

後戻りしやすい歯並びとは?

矯正治療後に後戻りしやすい歯並びにはいくつかの要因がありますので、ご説明します。

1. 過蓋咬合

過蓋咬合は噛み合わせが深い状態で、上の前歯が下の前歯を異常に多く覆っています。

深い咬み合わせの特徴と問題点

1. 噛む力が強すぎる

噛み合わせの深い人は、もともと噛みしめや食いしばりの癖のある方が多く、強い力で噛む癖があります。その癖を治さない限り、後戻りを起こして再び過蓋咬合を起こす場合があります。

2.奥歯の角度や形

もともと奥歯の当たる角度や歯の形によって咬み合わせが深くなりやすい歯並びの場合、後戻りを起こる場合があります。

3. 歯列の安定性

過蓋咬合が治って噛み合わせが整い、きれいな歯並びになっても、歯の新しい位置が安定するまでには時間がかかります。特に、治療中に歯に付けていたブラケットやワイヤーが取り除かれた後、歯が安定するまでの間に後戻りが起こるリスクがあります。

2. 捻転

歯が捻じれて生えている状態を捻転といいます。捻転は子供の歯の生え変わりの時期に、乳歯が永久歯が生えるのを邪魔して起こる場合や、前歯の生えるスペースが足りない場合に起こりやすいです。

捻転の特徴と後戻りの問題点

捻じれている歯を真っ直ぐに治す場合、歯の周囲の歯周靱帯が元の位置から引っ張られます。一般的に歯周靱帯などの組織は、元の位置に戻って安定しようとする特徴がありますので、後戻りがしやすいと考えられます。

3. 叢生

叢生とは、歯が狭いスペースに混みあって生えた状態で、いわゆるガタガタの歯のことです。顎が小さく、歯が生えるスペースが足りない場合に起こりやすいです。

叢生の特徴と後戻りの問題点

ガタガタの歯並びは、顎が小さいために起こることが多いのですが、それ以外に、唇や舌などのお口周りの筋肉の動きが悪いことも叢生を起こす要因となります。保定装置できれいな歯並びをキープしながら、お口周りの筋肉を良く動かしてバランスを整えることが大切です。

後戻りを予防するためのリテーナーの重要性

矯正治療後に歯列が元に戻ってしまう後戻りを防ぐためには、治療終了後にリテーナーを必ず担当医の指示通りにつけなければなりません。リテーナーについてご説明します。

リテーナー(保定装置)とは?

リテーナー

リテーナーは、矯正治療できれいな歯並びになった歯の位置をキープするための装置です。リテーナーの種類には取り外し可能なものと固定式のものがあります。治療にかかった期間と同じくらいの期間、リテーナーを使用することが望ましいとされています。

リテーナーの重要性とは

1. きれいな歯並びをキープする

矯正治療で少しずつ新しい位置に動いた歯は、安定して動かなくなるまで時間を必要とします。リテーナーは歯周組織が安定するまでの間、現在のきれいな歯並びをキープするのを助け、後戻りを防ぎます。

2. 日常的な癖などにより歯が動くのを防ぐ

リテーナーは歯を舌で押してしまう、頬杖をつく、爪やペンを噛むなどの生活習慣による歯の移動を防ぎます。

リテーナーの正しい利用

リテーナーは担当医からの指示に従って使用しましょう。装着する時間と頻度によってリテーナーの効果が変わることがあります。治療が終わってから数か月の間は特に歯の後戻りが起こりやすい期間です。後戻りを防ぐためにはリテーナーの着用が重要です。

また、取り外し式のリテーナーはきれいに洗浄して清潔な状態で使用するようにしましょう。

矯正治療後の後戻りは必ず起こるのかに関するQ&A

矯正治療後の歯の後戻りとは何ですか?

治療後の歯の後戻りとは、矯正治療で一度はきれいになった歯並びが、治療終了後に元の位置やそれに近い方向へと戻ってしまう現象のことです。矯正治療で変更された歯の位置を維持するためには一定のケアが必要です。

矯正治療後の後戻りが起こる原因は何ですか?

治療後の後戻りの原因にはいくつかあります。これには歯周組織の再編成による生物学的な要因、筋肉のバランス、生活習慣(癖)、噛み合わせの不適合、リテーナー(保定装置)の不適切な使用などが含まれます。これらの要因が組み合わさることで、歯が元の位置に戻ろうとする力が生じます。

後戻りを予防するためのリテーナーの重要性は何ですか?

リテーナーは、矯正治療で得たきれいな歯並びを維持するために非常に重要です。リテーナーは、歯周組織が新しい位置に安定するまで歯を保持し、後戻りを防ぎます。また、舌で歯を押す、頬杖をつくなどの日常的な癖による歯の移動を防ぎ、治療の効果を長持ちさせる役割を果たします。

まとめ

歯のキャラクター

矯正治療後に何もしないでいると歯の後戻りが発生します。後戻りは歯や筋肉が元の位置に戻ろうとする力や日常の歯を押すような生活習慣、リテーナーの使用を怠ることなどが原因で起こります。

矯正治療で整った歯並びを維持するためには、リテーナーと呼ばれる保定装置の使用が必要です。リテーナーは歯並びをキープし、後戻りを防ぐ役割を果たしますので、必ず担当医の指示通りに使用するようにしましょう。

矯正治療後の後戻り(リラプス)についての研究は以下の通りです。

1. 矯正治療後の後戻りは、長期的な矯正治療の成功において最も重要な部分の一つです。後戻りは、成長、歯周組織、年齢、親知らず、歯の寸法など、多くの要因によって発生する可能性があります。後戻りを防止するために、多くの治療手順が考案されています。リテンションとリラプスに影響を与える変化と様々な要因を適切に理解することが重要です。新しい矯正治療法は、理想的な終了治療結果を提供するかもしれませんが、リテンションとリラプスが考慮されなければ、患者にとって重要な影響を与えることはできません。 【Yashwant et al., 2021

2. 矯正治療後の後戻りは約70%?90%の割合で発生し、まだ解決されていない矯正問題です。リテンションデバイスは予防の一つですが、かなりの時間を要します。多くの矯正歯科医は後戻りの管理に依然として困難を感じており、追加の研究が必要です。後戻りの生物学的基礎に関する既存の知識に基づいて、リラプス規制における生体医工学的アプローチは有望です。このレビューでは、矯正後戻りの予防に最も有望なポリマー材料とその潜在的な矯正用途についても議論されています。 【Rosyida et al., 2022

これらの研究結果から、矯正治療後の後戻りは一般的な問題であり、その発生を防ぐためには多くの要因を考慮に入れた治療手順が必要であることがわかります。また、最新の研究では、ポリマー材料を用いた治療法が後戻りを防ぐための新しいアプローチとして有望であることが示唆されています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 高槻クローバー歯科
院長 髙野 祐

2013年 岡山大学 歯学部卒業。2014年 岡山大学病院臨床研修終了

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高槻クローバー歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック