矯正歯科

受け口はどんな影響を及ぼす?

受け口はどんな影響を及ぼす?

受け口がどんな影響を及ぼすかと聞かれると、見た目という審美性の他に、咀嚼や、発音なども挙げられます。詳しくご紹介いたします。

受け口が影響を及ぼす身体の機能

受け口が影響を及ぼすのは、下記の通りです。

  • 見た目
  • 噛みにくい
  • 発音がしにくい
  • 身体の痛み
  • 心理的な影響

正常な噛みあわせの人は、上のあご(上顎)が下のあご(下顎)よりわずかに前へ出ている状態ですが、受け口の人は下顎の歯が上顎の歯よりも前へ出てしまっています。

受け口とは

受け口とは上のあご(上顎)に比べて下のあご(下顎)が前方へ出ている状態です。一般的に受け口と呼びますが、専門的には反対咬合や下顎前突という不正咬合です。詳しくはこちらをご覧ください。

受け口を放置できない理由

受け口を放っておけない理由として、見た目や咀嚼、発音や体の不調が挙げられます。

見た目が気になる

上の歯より下の歯が前に出ているため、周囲の人と見た目が異なります。それにより、心理的にも見た目にコンプレックスを抱いてしまう原因になります。

咀嚼しづらい

前歯には食べ物をちぎるという役割がありますが、上の前歯が下の前歯より引っ込んでいるため難しいです。そのため、お口の中に入ってきても噛みづらくなり、力を入れて咀嚼し、顎関節にも大きな負担を生じます。また、不十分な咀嚼により、消化器官へも負担がかかります。咀嚼機能が低下すると、消化器官への負担以外にも満腹感を得られにくいため、食べ過ぎてしまいます。

発音がしづらい

言葉を発音する際、舌、唇や、前歯が重要なポイントです。前歯の噛みあわせが反対になると通常より隙間が空いているため、息が漏れる傾向にあり、発音が悪くなります。発音に関しても、舌足らずな話し方になってしまいます。

他の部分の痛み

下顎は、全身のバランスにも影響します。肩や首、腰などとつながっているからです。そのため、顎の痛み以外に、肩こりや腰痛などのトラブルが起きる可能性があります。

受け口の矯正治療方法

すべて永久歯に生え変わった状態か、永久歯と乳歯が入れ変わりつつある混合歯列期か、乳歯のみの幼児期かなど歯の状態によって、受け口の治療方法は大きく違います。また、軽度か、中程度、重度など、受け口の程度によっても異なります。

すべて永久歯に生え変わった状態

成長の具合や個人差がありますが、12~13歳位にはだいたい生え変わる状態です。

受け口・中程度の場合

受け口が軽度ならば部分的に矯正ですが、中程度になると下あごの前歯を後ろへ並べるためのスペースが必要となります。そのため、前歯と奥歯の間にある小臼歯という左右の歯を抜歯して、そのスペースへ前歯を動かすという治療法です。

使用する矯正器具

マルチブラケット矯正で歯の表面にブラケットという突起をつけ、ワイヤーを通して歯を動かす方法が適していますが、マウスピース矯正がご希望という場合は、ワイヤーによる矯正を併用して治療することが可能です。

受け口・重度の場合

先天的な遺伝から骨格的に下顎が前方に出ているというケースは、手術で治療する方法をおすすめすることがあります。全身麻酔や骨を切るということに抵抗感がある方もおられるので、歯列矯正で前歯の前後の位置を正しくすることはできますが、横顔の印象やEラインが歯列矯正で綺麗に変化するというわけではありません。

永久歯と乳歯が入れ変わりつつある混合歯列期

10歳未満の子供ならば、上顎拡大装置をつけて上あごの成長を促進します。子供の場合、上あごの内側の真ん中にある正中口蓋縫合(せいちゅうこうがいほうごう)という骨の継ぎ目が10歳の前半まではやわらかい状態です。拡大装置を使用すれば、歯列の幅を大きく広げることが出来ます。

使用する矯正器具

急速拡大装置や、上顎前方牽引装置を使用する可能性があります。

乳歯のみの幼児期

まだ乳歯の段階で、下の前歯が前に出ていて受け口と診断されれば、マウスピースによる矯正となります。この時期に受け口と診断される場合、下記のいずれかが当てはまります。

  • 噛みあわせがうまくいかない
  • 唇の上下の力が釣り合わない
  • 舌が正しい位置にいない
使用する矯正器具

ムーシールドというマウスピースを終身の際に装着します。上あごの成長を促進し、舌の位置やあごを正しい位置にするための矯正器具です。

受け口はどんな影響を及ぼす?に関するQ&A

受け口とはどのような不正咬合ですか?

受け口とは、上のあご(上顎)に比べて下のあご(下顎)が前方に出ている状態のことです。これは「反対咬合」や「下顎前突」とも呼ばれ、不正咬合の一種です。受け口の人は、上顎の歯が下顎の歯よりも内側に位置することが特徴です。

受け口を放置するとどのような問題が生じますか?

受け口を放置すると、見た目の問題に加えて、咀嚼の効率が悪くなったり、発音に影響が出ることがあります。さらに、不正な咬み合わせによって顎関節に負担がかかることがあり、頭痛や肩こり、腰痛など全身に影響を及ぼす可能性があります。

受け口の矯正治療方法にはどのようなものがありますか?

受け口の矯正治療方法は、患者の年齢や受け口の重度によって異なります。成人の場合はマルチブラケット矯正や、重度の場合には外科手術を組み合わせた矯正が必要になることがあります。子供の場合は、上顎拡大装置や上顎前方牽引装置などを用いることが一般的です。

まとめ


受け口の影響は見た目だけではありません。発音や、胃腸への負担、コンプレックス、痛みに繋がると言われています。受け口と診断されたら早めに矯正歯科で治療を受けるように心がけましょう。

受け口(アンダーバイト)が身体に及ぼす影響に関しては、以下の研究結果があります。

1. 顎の異常成長
インドネシアの症例報告では、重度の双側下顎肥大とアングルのクラスIII不正咬合が観察されました。この症例では、20歳の男性が下顎の凝縮性過成長とアングルのクラスIII不正咬合を呈しており、顎形成外科、口腔外科、矯正歯科、心理学などの専門家による多職種チームによる治療が行われました。【Bogari et al., 2022

2. 顎神経腫の症例
別の症例報告では、16歳の男子が顎神経腫によって痛みのない咬合不全と片側咀嚼筋の弱さを示しました。これは顎神経腫がアンダーバイトを引き起こす初めての文書化された例であり、顎神経の病変を局所化する際の解剖学的理解の重要性が示されました。 【Bertot et al., 2020

これらの研究は、受け口が顎の成長や顎神経の機能に影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。しかし、受け口の影響は個人差が大きく、専門家による評価が必要です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 高槻クローバー歯科
院長 髙野 祐

2013年 岡山大学 歯学部卒業。2014年 岡山大学病院臨床研修終了

▶プロフィールを見る

高槻クローバー歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック