矯正で顔の歪みが治ると断言はできませんが、歯に原因があり、程度が重度でなければ治ることがあります。矯正と顔の歪みの関係性、矯正治療以外の顔の歪みの治療法について詳しくご紹介いたします。
顔の歪みの症状とは
顔の歪みとは、左右のバランスが崩れている非対称の状態を指します。もちろん顔面が非対称な方はごくわずかですが、鏡で顔をチェックした時にこのような症状を感じたことはありませんか。
- 片方の頬が反対側より下がっている
- 口角の高さが右と左で違う
- 顎がどちらかにずれている
- 片方の頬が膨らんで見える
- 目の高さが違うように見える
- 噛み合わせがズレている
このような症状がある場合、顔の歪みやねじれに歯並びや噛み合わせが関係している可能性があります。
顔の歪みの原因と歯並びの関係性
顔の歪みの原因はさまざまですが、歯並びや噛み合わせが大きく影響することが多いです。
① 噛み合わせのズレ
歯並びに前後差があったり、噛み合わせがずれているトラブルを不正咬合と呼びます。不正咬合には種類が様々ありますが、不正咬合であれば顔に左右差が生じる可能性が高いです。
出っ歯(上顎前突)
上顎の歯が下顎の歯より飛び出し傾斜があるため、顔の前面に歪みが生じる
受け口(下顎前突)
下顎の歯が上顎の歯より前に出るため、下顎が発達することが多く、顔が長く見える
開咬(オープンバイト)
奥歯を噛んだら前歯が噛み合わず口が開きやすくなり、無理に閉じると顎にしわができる
② 顎の成長バランスや骨格バランスの乱れ
成長期に顎へかかる力が正常にかからなければ、どうしても左右差が生じます。上顎がお顔の三分の一、下顎がお顔の三分の一を占める広い面積です。成長期に顎へ正常な力が加わらず、左右によりかかる力が異なると、非対称な顔つきになりやすいです。
③ 姿勢の悪さ
猫背や頬杖をつくなどのクセ(態癖)があると、顔の片側だけに負担がかかり歪みが生じます。
④ 筋肉の使い方の偏り
左右の噛み癖の偏りは、噛んでいる方の顎や頬の筋肉が発達し、噛んでいない方の筋肉は発達しないため、片方ばかりで咀嚼すると、顎の筋肉のバランスが崩れてしまいます。歯ぎしりや食いしばりも同様で、歯にも負担がかかり、歯や歯肉など口腔機能の健康寿命を損ないます。このように、歯並び・噛み合わせ・生活習慣が複雑に関係して顔の歪みが生じます
矯正治療で顔の歪みは治る?
矯正治療で、歯並びや噛み合わせを整えることで、顔のバランスを改善する効果があります。ただし、顔の歪みが歯によるものであるという歯因性、また、重度ではないケースに限ります。
矯正で改善できる顔の歪み
歯列矯正によって顔の歪みが改善されるケースを挙げていきます。
不正咬合が原因で起きる顔の歪み
出っ歯や受け口という歯並びの問題を改善することで、フェイスラインがすっきりすることはあります。口元の突出感が減り、横顔の印象が変わります。
左右の顎のズレの軽減
噛み合わせを正しい位置に戻すことで、高さが整います。顔全体のバランスが改善していきますし、顎関節症になるリスクを減らすことができます。
矯正治療の方法
歯列矯正の装置の特徴は様々です。
表側矯正
ワイヤー矯正と呼ばれる最も一般的な歯列矯正法です。ブラケットと呼ばれる突起を歯の表面(唇側)に接着し、ブラケット内にワイヤーを通して、歯を動かす矯正力をかけます。見た目に矯正治療を行っていると分かりやすいですが、費用は他の治療法より抑えられることが多いです。
裏側矯正
舌側矯正とも呼ばれる歯列矯正法です。ブラケットという突起を歯の表面(舌側)に接着し、ブラケット内にワイヤーを通して、歯を動かす矯正力をかけます。見た目に矯正治療を行っていると分かりにくいのがメリットですが、慣れるまでは発音や咀嚼に違和感を覚えます。
マウスピース型矯正
透明なプラスチック製のマウスピース型を作製し、マウスピースを交換していくことにより矯正力をかけます。噛み合わせが悪い場合は、アタッチメントと呼ばれる白い突起をつけてそこを固定源にして、より強い矯正力をかけます。食事の制限がなく、患者さん自身で取り外しができることがメリットですが、装用時間を守らなければ歯が動かないデメリットがあります。
矯正だけでは改善が難しいケース
歯列矯正では改善が難しいケースを挙げていきます。
骨格そのものが大きく歪んでいる場合(顎変形症)
顎変形症という症状はあまり聞きなれないかもしれませんが、上顎と下顎の大きさ、位置、バランスに異常が起きている状態です。
- 生まれつき顎骨に先天的な異常がある先天性顎変形症
- 炎症、骨折、腫瘍などにより顎骨の変形が起きた後天性顎変形症
- 顎の成長期に発育異常が起きる顎変形症
いずれの場合も、顔貌(がんぼう)と呼ばれる顔の歪みのみではなく、話しづらかったり、うまく噛めなかったりする機能異常が現れます。先天性である場合は父母からの遺伝の可能性が高いですが原因は不明で、後天性である場合は外部から強い衝撃がかかったことが考えられます。顎変形症の治療については症状や程度により保険適用外になることもあります。保険適用なれば大学病院を受診して歯列矯正を受けることになりますが、年月としては長くかかることが多いです。
成長期を過ぎて、顎の成長が完了している場合
上顎は約12歳、下顎は18歳位までに顎の成長は完了しています。歯が原因ではなく、骨格が原因である場合は、矯正治療が妥当な治療とは言えません。外科手術(骨切り手術)や補助的な治療が必要になることもありますが、何が原因かについては、一度歯科医院でご相談ください。
矯正以外の治療法と組み合わせの可能性
歯列矯正のみでなく、以下の方法と組み合わせることで、より効果的に顔の歪みを改善できる場合があります。
① 姿勢矯正
猫背や体の歪みが顔に影響するため、日常的に姿勢を意識しましょう。座るときは背筋を伸ばし、骨盤を立てるように意識をして、スマホを見る時は、顔を下げすぎないようにして顎への負担軽減してください。うつぶせ寝や横向き寝をやめて仰向けに寝るようにしたり、頬杖を突いたりする態癖も気づいたらやめるようにしておくと良いです。
② 呼吸を変える
口呼吸では口が開きっぱなしになることから、お口が乾燥して細菌感染のリスクが高くなる以外に、舌の位置が後方へ下がります。後方へ下がると気道に圧迫し、また、本来舌の力が働いて成長する上顎に力がかからない状態になり、上顎の発達がうまくいかないという状態になります。舌の位置を上顎の前歯の裏側にきちんと置く鼻呼吸へすることで、舌の力がかからないようにしましょう。
③ 噛み癖を改善する
片方ばかりで噛む癖がある方は、両方の歯を均等に使いましょう。また、柔らかい食べ物ばかり食べず、根菜類などを食卓に取り入れ、しっかり噛む習慣をつけてください。
④ 表情筋トレーニングを取り入れる
口角を上げるトレーニングで顔の左右差を整えましょう。例えばあいうべ体操は子供から大人まで年齢制限なくでき、口周りのトレーニングには効果的です。
これらの習慣を意識することで、顔の歪みの悪化を防ぐことができます。
まとめ
矯正で顔の歪みは治るのかという疑問に対し、矯正治療は歯並びや噛み合わせを整え、顔のバランスを改善する効果が期待できることが分かりました。軽度の歪みは矯正で改善可能だが、骨格のズレが大きい場合は、外科手術などが必要になることもあります。日常の姿勢や噛む際の癖の改善も重要になるため、矯正治療を検討している方は、専門医に相談して自分に最適な治療法を見つけることが大切です。