補綴とは詰め物や被せ物、入れ歯などで歯を補うことをいいます。虫歯などで医院での歯の治療が必要になったときに、歯を長もちさせ、歯の寿命を縮めない治療にはどのようなものがあるかをご説明します。
銀歯は二次虫歯になりやすい
虫歯を治すために保険診療の銀歯で詰め物やかぶせ物をして、何年か経ってそこが再び虫歯になってしまったら、大きなショックを受けると思います。
銀歯は歯とセメントで接着するために隙間が出来やすく、そこから虫歯菌が内部に入り込むと、詰め物や被せ物の内側に虫歯が広がってしまいます。1度目の治療で既にエナメル質を削っているので、虫歯菌はやわらかい象牙質をどんどん溶かしていきます。
そのためかなり時間がたってから二次虫歯に気づいた時には既にかなり深い虫歯になっていることが多く、神経を取って更に大きなかぶせ物にするか、または抜歯が必要になるかもしれません。失った歯を補うための治療であるブリッジや入れ歯も同様に、数年後にやりなおさなければならなくなり、将来歯を失うことに繋がるとしたら、本当に不安になると思います。
保険診療の銀歯ではなく、自由診療のセラミックなどの材料を使えば、二次虫歯になるリスクはかなり減り、歯の長もちにつながります。しかし、歯を削ったり詰めたりすることで歯にダメージを与えますので、将来更なる治療を行う必要があるかもしれないということに変わりはありません。
ブリッジ、部分入れ歯は隣の歯の寿命を減らす
では、既に歯を失ってしまってブリッジや部分入れ歯で治療した患者さんたちは歯の長持ちという点から見てどうでしょうか?
歯を失ってブリッジにした場合
ブリッジは図のように両隣の歯を土台にして橋渡しのようにして3本連結の被せ物をかぶせて歯の機能を回復させます。ブリッジをするためには、どうしても両隣の歯を削らなければなりません。両隣の歯が虫歯のない健康な状態であれば、ブリッジの土台に使うために歯の表面を3分の1〜4分の1くらいを削らなければなりません。
歯を削って、隣の歯の分まで負担をかけたとしたら、その歯の寿命は当然減ってしまい、歯の長もちという観点からは好ましくありません。もしブリッジの土台にさえ使わなければ、その歯は今後30年以上も使い続けることができるかもれないのです。
そのような理由から、ブリッジの土台にするためにご自分の歯を削りたくないとおっしゃる患者さんも多いです。
歯を失って部分入れ歯にした場合
部分入れ歯の土台になる歯にも、同じ事がいえます。部分入れ歯を安定させるためには、残っている歯にバネをかける必要があります。金属のバネは目立つため、人から見えない奥歯ならまだしも、前歯に使うのは躊躇される方が多いです。
バネをかけることで隣の歯の分まで負担がかかり、歯の寿命が縮みますので、長もちという観点では好ましくありません。
もしバネをかけて支えに使わなければ、ブリッジの土台に使わなかった歯と同様に、これから30年以上使い続けることができるかもしれません。また、入れ歯のプラスチックの部分には細菌が棲みつきやすいため、毎晩お口から外して入れ歯専用の洗浄液を使用してきれいに洗わねばなりません、
このように、ブリッジも入れ歯も隣の歯に大きな負担をかけることになり、将来その歯も傷めるリスクがあります。では、大切な天然歯をこれ以上失わない為にはどうすれば良いのでしょうか?
インプラント治療なら長く使える?
インプラントは顎骨に人工歯根を埋め込み、その上に上部構造を被せて失った歯の代わりにします。インプラントは人工歯根によって自立していて、隣の歯を削ったりバネをかけたりする必要がありません。
このように他の歯を傷めないということが、インプラントの大きなメリットの一つです。もしブリッジや部分入れ歯ではなく、歯を失ったところにインプラントを入れて、定期健診を受けていただきながら虫歯や歯周病の予防をしっかり行えば、残った歯を長持ちさせることが出来、生涯使うことも可能かもしれません。
インプラントは保険がきかない自由診療なので、治療費が高額です。外科手術が必要になりますので、持病のある方は手術を受けられないケースもあり、どなたにでもおすすめとは言えないのですが、失った歯の代わりにインプラントを入れて、適切にケアしていくことで、残った歯を長く守ることができる可能性があります。
歯を長もちさせるための補綴治療に関するQ&A
補綴治療は、詰め物や被せ物、入れ歯などを使用して歯を補う治療方法です。
銀歯は歯とセメントで接着するために隙間ができやすく、そこから虫歯菌が内部に入り込みやすくなります。
セラミック製の詰め物やかぶせ物は隙間が少なく、虫歯菌が侵入しにくい特徴があります。そのため、二次虫歯のリスクが減ります。
まとめ
歯の寿命を考えた治療という観点から、銀歯、ブリッジ、入れ歯などの補綴治療についてご説明しました。歯を長もちさせるためには、歯科材料や治療方法の点から、自由診療が望ましいのですが、もちろん保険診療でも、何とか歯を長もちさせるために出来る限りの治療をしております。また、当院では虫歯や歯周病で歯をうしなわないための予防歯科にも力を入れています。